高齢ドライバーの運転免許 認知症テストと高齢者講習をくわしく解説

目安時間:約 16分
高齢ドライバーの運転免許

高齢ドライバーが起こす交通事故がよくテレビのニュースでも取りあげられることが多くなり、高齢者が起こす交通事故が社会問題化しています。

 

私の父親は79歳になっていて、買い物や病院へと125ccのスクーターを毎日のように運転していて、いつ事故を起こさないか母親や兄弟を含め家族で心配しています。

 

先日も孫を乗せていて坂道で転倒しましたが、幸い孫も父親もヘルメットを着用していたのでケガもありませんでしたが、この先のことを考えるとこれ以上運転を続けてほしくはありません。

 

父親の身体状況は、耳が遠くなったということと、認知症の影響か以前よりも怒りぽくなっていて、母親は言葉を選びながら話していますが・・・ケンカが絶えません。

 

自動車の運転免許を持っていない父親にとって、長年にわたって運転してきたバイクは、本人にとっては手足のようなもので、運転免許を更新せずに返納してもらうことはなかなか難しい状況です。

 

しかし、近年では75歳以上の高齢ドライバーが運転免許を更新するには、高齢者講習と認知症テスト受けないと運転免許を更新することができなくなっています。

 

そこで今回は高齢ドライバーが起こす交通事故の発生状況や原因や免許更新に必要な高齢者講習と認知症テスト、もしも事故を起こしてしまった時の保険、事故を起こす前にできる対処方法などについて、くわしく解説していきます。

 

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高齢ドライバーが起こす交通事故

「病院や買い物に行くところが遠いので車がないと困る」

 

「まだまだ、運転には自信があるから大丈夫」

 

などの理由で車を運転する高齢ドライバーは多くいます。

 

しかし、高齢により視力が弱まって周りの状況が見えづらくなり、信号無視や高速道路の逆走など正しい判断ができずに交通事故を起こしてしまうことがあります。

 

高齢ドライバーが起こす事故発生状況

65歳以上の高齢ドライバーが起こした事故発生件数は、2008年から昨年まで横這い状態ですが、全体の事故件数に対して高齢ドライバーによる事故の割合は、11.1%から17.9%と年々高くなっています。

 

 

※この表は警視庁交通総務課統計を参照しています。

参照元URL:https://www.npa.go.jp/publications/statistics/index.html

 

高齢ドライバーが起こす事故原因

高齢ドライバーが交通事故を起こす原因は、脇見や考え事をしているなど注意力や集中力の低下による発見のおくれ、信号機の色の識別ができないなど瞬間的な判断力の低下による判断の誤り、運転操作のミスなどの理由があります。

 

実際に高齢ドライバーが起こした交通事故の原因をまとめた警視庁交通総務課統計を見てみると、発見遅れが83.5%、判断の誤り等が9.6%、操作上の誤りが6.8%、調査不能が0.1%になっています。

 

 

※このグラフは警視庁交通総務課統計を参照しています。

参照元URL:https://www.npa.go.jp/publications/statistics/index.html

 

免許更新に必要な高齢者講習と認知症テスト

高齢者講習は1980年代後半に始まり当初は任意参加という形でしたが、1997年に道路交通法が改正されて75歳以上に義務付けされ、さらに2001年には70歳以上にと対象年齢が引き下げられました。

 

運転免許を更新するときの年齢が70~74歳の人は運転免許を更新する手続きの前に高齢者講習を受ける必要があり、更新するときの年齢が75歳以上の人は更新手続きをする前に高齢者講習と認知機能検査を受ける必要があります。

 

高齢者講習と認知機能検査は視力の低下や反射神経などの身体機能による交通事故の抑制が目的で、高齢者講習は受講義務があり、認知機能検査で認知症と診断されると運転免許の取り消しか停止処分を受けることになります

 

ここからは、高齢者講習と認知機能検査についてくわしくみていきます。

 

高齢者講習を受けられる期間

高齢者講習は免許証に書かれている有効期限の年齢により70歳~74歳までの人と75歳以上の人に対して2つの講習が用意されていて、警視庁から委託された教習所で免許証の更新期間満了日の6カ月前から受講することができます。

 

例えば誕生月が8月とすると、免許証の更新期間は7月(誕生日の1ヶ月前)から9月(誕生日の1か月後)になるので、高齢者講習を受けられるのは9月の6ヶ月前になる3月から9月の期間で受けることができます。

 

ただ、教習所が忙しい2~4月と7~9月は予約がとりにくくなっているので注意が必要です。

 

70歳~74歳の高齢者講習

70歳~74歳の人が受ける高齢者講習は、ビデオなどを使って交通ルールを再確認する座学や運適正検査機材を使い動体視力など運転に必要な視力の検査を行い、実際に車を使って指導員から運転についてのフィードバックを行うという内容になります。

 

かかる時間は約2時間で、高齢者講習の日に持っていくものは、「免許証更新のための講習のお知らせ」はがき、運転免許証、手数料5,100円、筆記用具、眼鏡等(必要な方)になります。

 

尚、受講終了後に修了証明書が発行されるので、免許証の更新をするときには、高齢者講習終了証明書、更新手数料2,500円、「運転免許証更新のお知らせ」はがき、眼鏡・補聴器等(必要な方)になります。

 

75歳以上の高齢者講習

75歳以上の高齢者講習は、認知機能検査を受けた後、別な日に高齢者講習を受けることになります。

 

ただ、認知機能検査の結果によっては医師の診断が必要になり、認知症と判断された場合は運転免許の停止、取消しの対象になってしまいます。

 

認知機能検査

認知機能検査は対象者の判断力や記憶力の状態を調べるための簡易検査になります。

 

検査項目は、「時間の見当識」、「手がかり再生」、「時計描画」の3つになります。

 

時間の見当識は、検査を行っている年月日や曜日、時間について答えます。

 

手がかり再生は、16種類の絵を記憶して、何が描かれていたかについて答えます。

 

時計描画は、時計の文字盤に、指定された時間を表す針を描いていきます。

 

検査後に採点が行われ、点数が48点以下の人は「記憶力・判断力が低くなっています」、49~75点の人は「記憶力・判断力が少し低くなっています」、6点以上の人は「記憶力・判断力に心配はありません」の3段階で判定結果がでます。

 

認知機能検査にかかる時間は30分で、認知機能検査当日は、「検査と講習のお知らせ」はがき、手数料750円、筆記用具、眼鏡・補聴器等(必要な方)になります。

 

検査結果は即日もしくは後日に書面で伝えられます。

 

高齢者講習

75歳以上の人の高齢者講習は認知機能検査の判定結果により講習内容が変わります。

 

【記憶力・判断力が低くなっています】

 

運転免許本部より通知があり、医師の診断書の提出が必要になり、診断結果で認知症と診断された場合は、運転免許の停止、取消しの対象になります。

 

診断結果が認知症ではなかった場合は、高齢者講習(3時間コース)を受講することになり、ビデオなどを使って交通ルールを再確認する座学や運適正検査機材を使い動体視力など運転に必要な視力の検査を行い、実際に車を使って指導員から運転についてのフィードバックを行うという内容になります。

 

【記憶力・判断力が少し低くなっています】

 

高齢者講習(3時間コース)を受講することになり、ビデオなどを使って交通ルールを再確認する座学や運適正検査機材を使い動体視力など運転に必要な視力の検査を行い、実際に車を使って指導員から運転についてのフィードバックを行うという内容になります。

 

【記憶力・判断力に心配はありません】

 

高齢者講習(2時間コース)を受講することになり、ビデオなどを使って交通ルールを再確認する座学や運適正検査機材を使い動体視力など運転に必要な視力の検査を行い、実際に車を使って指導員から運転についてのフィードバックを行うという内容になります。

 

高齢者講習の日に持っていくものは、「免許証更新のための講習のお知らせ」はがき、運転免許証、手数料(2時間講習は5,100円、3時間講習は7,950円)、筆記用具、眼鏡・補聴器等(必要な方)になります。

 

尚、受講終了後に修了証明書が発行されるので、免許証の更新をするときには、高齢者講習終了証明書、更新手数料2,500円、「運転免許証更新のお知らせ」はがき、眼鏡・補聴器等(必要な方)になります。

 

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高齢ドライバーが事故を起こしたら

高齢ドライバーが運転操作を誤り、路側帯に突っ込み、登校中の小学生をはねる事故や高速道路を逆走して事故を起こしてしまうなどさまざまな事故が発生していて、万が一高齢ドライバーが交通事故を起こしてしまったら取り返しのつかないことになってしまいます。

 

 

 

ここからは、高齢ドライバーが事故を起こしてしまっときの保険会社の対応、家族の賠償責任についてみていきます。

保険会社の対応

自動車保険は強制的に加入する自賠責保険と任意保険の2種類があり、自賠責保険は認知症の人が運転をしていて事故を起こした場合でも保険金は支払われます。

 

ただ、支払われる保険金は対人賠償に限定され、死亡で最高3,000万円、ケガで最高120万円、後遺障害で最高4,000万円になり、十分な備えとはいえません。

 

一方の任意保険も認知症の人が運転をしていて事故を起こした場合でも、相手のケガや死亡に対する対人賠償、相手の車やモノに対する対物賠償に対しても保険金は支払われます。

 

ただし、運転者や搭乗者を補償する人身傷害や車を補償する車両保険については保険金が支払われる場合と支払われない場合があります。

 

これは保険会社によって対応が異なり、保険約款に「被保険者の脳疾患、疾病または心神喪失によって生じた損害」、「故意もしくは重大な過失があった場合」と明記されている場合、運転していた人が認知症と認定されれば保険金が支払われないことがあります。

 

家族にも賠償責任

法律では、交通事故を起こしてしまった場合は、「不法行為に基づく損害賠償責任」を負うことになり、認知症の高齢ドライバーが事故を起こして「責任能力ない」と判断された場合や本人に賠償責任能力がない場合には、家族が「監督責任」を問われることもあります。

 

病院に行きたがらない時の対応、認知症の人への対応に困ったときは・・・

 

認知症対策マニュアル

 

高齢ドライバーが事故をおこす前にするべきこと

認知症の疑いがある高齢ドライバーには、

 

運転中に行き先を忘れる

駐車や幅寄せが下手になる

運転中にボォっとして注意力が散漫になる

知らない間に車にキズをつけている

 

などの特徴が見られる傾向にあります。

 

このような特徴を見つけたときは、できるだけ早く運転をやめてもらい事故を未然に防ぐ必要がでてきます。

 

具体的に運転をやめてもらい事故を未然に防ぐには運転免許証の自主返納と運転できない環境を作る方法があります。

 

運転免許証の自主返納

ケアマネや医師を含めて身近な人が、「運転しなくても周りで生活を支えるからリタイアを考えて」という言葉で親を尊重しながら運転免許証の自主返納を促してください。

 

「認知症だから運転をやめて」などという言い方をすると余計に親の反発が強くなってしまい、聞く耳をもってくれなくなってしまうので注意が必要です。

 

運転免許証の自主返納は最寄りの警察署や運転免許更新センターで手続きができ、手続きには運転免許証(一部地域では印鑑が必要)を持参するだけで自主返納手続きが行えます。

 

自主返納後は、最寄りの警察署や運免許更新センターで「運転経歴証明書」という公的な身分証として利用できるカードの発行申請ができます。

 

その運転経歴証明書を提示すると自治体では市営、県営バスや電車の割引・優待券、指定タクシー業者の運賃割引の特典や民間では補聴器や電動車イスの購入割引、温泉・銭湯の入浴料割引、ホテルの宿泊料割引などの特典が受けられます。

 

運転できない環境を作る

運転免許証の自主返納を受け入れてくれた場合でも、運転免許を自主返納したことを忘れて車を運転してしまうことがあります。

自主返納をした後はすみやかに車を処分するか、車を違う場所に移動させるなど運転できない環境を作るようにしましょう。

 

まとめ

ここまで、高齢ドライバーが起こす交通事故の発生状況や原因や免許更新に必要な高齢者講習と認知症テスト、もしも事故を起こしてしまった時の保険、事故を起こす前にできる対処方法などについて解説してきました。

 

最近では安全装置が搭載された自動車が多くなってきていて少し安心はできますが、
周りの家族としてはやはり不安は残ってしまいます。

 

とはいえ、無理矢理に運転免許や自動車を取りあげるのは、とても酷なことなので、
ケアマネや医師を含めて身近な人が運転免許の自主返納を促すことが大切です。

 

私も父親には事故を起こして他人に迷惑をかける前に運転免許を自主返納してもらい、
スクーターを運転できない環境を作っていきたいと思っています。

 

 

今回は「高齢ドライバーの認知症テストと高齢者講習」について紹介してきましたが、
「認知症が起こす死亡事故件数」についても以下の記事にまとめてあるので参考にどうぞ。

 

⇒認知症が起こす死亡事故件数は?新しい特約で救われる高齢運転者

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