
目 次
高齢者の多くの人が住んでいる住宅は、建てられてから30年、40年を経過していて、建物自体の老朽化が進んでいる上、家の内外にはさまざまなところに段差があります。
トイレや廊下、居室には敷居があったり、浴室や玄関、玄関から前面道路までの通路にも段差はあります。
若い人にとって、これらの段差はほとんど気にならないでしょうが、高齢者にとってはこれらの段差が移動の妨げになってしまい、つまずきや転倒の原因にもなります。
住宅の中にあるこれらの段差を全て取り除く工事をするとなると、大掛かりな工事になり、かかる費用も高額になってしまいます。
しかし、既存住宅の居室や廊下、トイレや浴室に手すりを新たに設置する方法であれば、工事の規模は小さくなり、かかる費用を抑えることができます。
手すりを取付けることで、つまずきや転倒の不安を取り除くことができて、安心して移動することができるようになります。
そこで今回は、既存住宅の住宅改修で手すりを取付けたときの費用、介護保険を使って手すりの取付け費用を安くする方法、介護保険を使った住宅改修の流れ、介護保険を使った住宅改修トラブルなど、手すりの取付け費用と介護保険を使った住宅改修についてみていきます。
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住宅改修で手すりの取付け費用の相場
住宅改修で手すりの取付け費用の相場は、取付ける手すりの太さや素材、取付ける長さ、取付ける方法や取付ける場所の下地状況などによって変わりますが、おおよそ10万円から20万円程度になります。
例えば、屋内階段(15段)に手すりを取付けた場合だと10万円くらいになり、玄関先にある屋外階段(3段)に手すりをつけた場合だと9万円くらいになります。
また、建物内の廊下壁面に距離が長い手すりを取付けた場合だと3~4万円くらいになり、浴室のタイル壁に縦型もしくは横型の樹脂手すりを1本取付けた場合だと1万円くらいになります。
このように、トイレや浴室、廊下や玄関、玄関先の屋外階段などの必要なところに手すりを取付けていくとおおよそ20万円程度が必要になってしまいます。
介護認定を受けている人であれば、介護保険から手すりを取付ける住宅改修費用の一部が支給されるので、利用することをおすすめします。
介護保険から支給される住宅改修費用の金額は
介護保険から支給される住宅改修費用の金額は、要支援、要介護の介護区分に関係なく一律20万円になります。
この20万円は一人一回きりの支給になり、分割して利用することも可能なのですが、全額20万円が支給されるのではなく、それぞれの負担割合に応じて1割から3割の自己負担が必要になります。
例えば、1割負担の場合だと、介護保険から18万円支給され2万円の自己負担が必要になり、3割負担の場合だと、介護保険から14万円支給され6万円の自己負担が必要になります。
原則、20万円は一人一回きりの支給になるのですが、介護度が要支援2から要介護4に、要介護1から要介護4になるなど、介護度が3段階以上重くなった場合、転居した場合などに限り再度支給対象になります。
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介護保険を使った住宅改修の流れ
介護保険を使った住宅改修の流れは以下のようになり、打合せ、工事、申請などにかかる期間は住宅改修の打合せから工事着工まで約3週間、事後申請から住宅改修費用の支給までだと2~3ヶ月かかります。
①住宅改修の打合せ
住んでいる市区町村にある地域包括支援センター、居宅介護支援事業者に相談をして、ケアマネージャーや住宅改修業者を交えて現地で打合せを行い、住宅改修プラン、住宅改修理由書、工事見積書を作成します。
住宅改修理由書はケアマネジャーの他に、福祉住環境コーディネーター2級以上の資格を持つ人などが作成できます。
②市区町村に事前申請
市区町村によって違いはありますが、事前申請に必要な書類は以下の7種類になります。
・住宅改修費支給申請書
・住宅改修が必要な理由書
※担当ケアマネジャー以外の人が作成した場合、資格証のコピーの添付が必要
・現況及び完成予想図面
※家全体が把握できる平面図、家の配置図、必要であれば断面図
・工事の見積りと内訳書
※材料費と施工費を分けて書くこと
※1万円以上の材料費の場合、カタログのコピーの添付が必要なる場合もあります
・改修前の状況が分かる日付入りの写真
※理由書に、段差に関して書いている場合は、段差がどれだけあるのか、
スケールをあてた写真の提出も必要
・住宅所有者の承諾書
※家屋所有者が本人以外の場合
・委任状(様式任意)
※本人・家族以外の人が申請される場合
また、2016(平成28)年1月より、マイナンバーの記入と提示が必要な場合もありますので、事前に確認するようにしてください。
③申請内容の確認
市区町村に事前申請を行うと、申請内容確認後、約1週間程度で「住宅改修費利用工事内容確認通知書」などの書類が郵送されてきます。
工事内容確認通知書が届いたことを工事業者に連絡をして工事に取りかかります。
気をつけたいのは、工事内容確認通知書が届く前に工事に取りかかったり、事前申請をせずに工事に取りかかってしまうことで、住宅改修費用の支給ができなくなってしまうので注意が必要です。
④工事代金の支払い
工事完了後には一旦工事代金の支払いが必要で、支払い方法は「償還払い(しょうかんばらい)」と「 受領委任払い (ずりょういにんばらい)」の2通りがあります。
償還払いとは、工事完了後に工事業者に工事代金の全額を支払い、後日、事後申請をすると、市区町村から自己負担金額を差し引いた金額が利用者本人の口座に振り込まれるという支払い方法になります。
受領委任払いとは、工事完了後に工事業者に自己負担分と限度額超過分(工事代金が20万円を超えた場合)を支払い、自己負担分以外の金額は、後日、事後申請をすると、市区町村から自己負担金額を除いた金額が工事業者の口座に振り込まれるという支払い方法になります。
償還払いは、知り合いや近所の工事業者であっても問題はないのですが、受領委任払いの場合は、市区町村で事前に受領委任払い事業者登録をしている工事業者でなければ利用することができません。
⑤市区町村に事後申請
市区町村によって違いはありますが、工事完了後の事後申請に必要な書類は以下の7種類になります。
・介護保険住宅改修費支給申請書
・介護保険住宅改修工事完了報告書
・内訳書
・請求書
※償還払いによる申請の場合は利用者から市区町村への請求書
※受領委任払いによる申請の場合は工事業者から市区町村への請求書
・領収書(原本)
※領収書に利用者の氏名が記載されいること、「上様」等は不可
※但書には住宅改修費と記載し、自己負担などがある場合は内訳も記載する
・改修後の状況が分かる日付入りの写真
※工事箇所全てを写したもの
※理由書に、段差に関して書いている場合は、段差がどれだけあるのか、
スケールをあてた写真の提出も必要
・委任状(様式任意)
※本人・家族以外の人が申請される場合
⑥申請内容の確認(払い戻し)
市区町村に事後申請を行い、申請内容が確認されると、「介護保険支給決定通知書」が郵送されてきます。
介護保険支給決定通知書に書かれた日付に書かれている金額が市区町村から振り込まれます。
償還払いの場合は、市区町村から自己負担金額を差し引いた金額が利用者本人の口座に振り込まれます。
受領委任払いの場合は、市区町村から自己負担金額を除いた金額が工事業者の口座に振り込まます。
介護保険を使った住宅改修トラブル
介護保険を使って住宅改修をすると、その費用の一部を市区町村が負担してくれる仕組みを利用して、近年、介護保険を使った住宅改修のトラブルが各地で発生しています。
「市役所やケアマネジャーの紹介で・・・」などと嘘をついて、高齢者世帯や昼間に高齢者のみになる家庭などを狙って、「介護保険を使えば無料で工事ができる!」、「介護認定申請もお任せ下さい!!」などと言って、支給上限額があることや事前申請が必要なことを説明せずに、強引な勧誘、長時間の居すわりなどで契約を迫る悪質な訪問販売業者がいます。
また、「モニター価格で・・・」などといって、大幅な値引きをして契約を迫ったり、工事後に追加工事費といって不当な費用を要求したりするなど、要望などを一切聞かずに一方的に話を進めてしまう業者もいます。
このようなトラブルを未然に防ぐためにも、まずはケアマネージャー、住んでいる市区町村にある地域包括支援センターに相談することが大切です。
「介護サービスの苦情やトラブル」についても以下の記事にまとめてあるので参考にどうぞ。
⇒介護サービスの苦情やトラブルはどこに言えばいいの?相談センターはあるの?介護サービスの不安を解決!
まとめ
ここまで、既存住宅の住宅改修で手すりを取付けたときの費用、介護保険を使って手すりの取付け費用を安くする方法、介護保険を使った住宅改修の流れ、介護保険を使った住宅改修トラブルなど、手すりの取付け費用と介護保険を使った住宅改修についてみてきました。
まとめると以下の4点になります。
・住宅改修で手すりの取付け費用の相場はおおよそ10万円から20万円程度
・介護保険から支給される住宅改修の費用は一律20万円で1割から3割の自己負担が必要
・介護保険を使った住宅改修は打合せから工事着工まで約3週間、
住宅改修費用の支給まで2~3ヶ月かかる
・介護保険を使った住宅改修トラブル未然に防ぐためにはケアマネージャー、
地域包括支援センターに相談する
自宅に手すりを取付けることで安全、安心して生活が送れるようになるけれど、住宅改修工事で介護保険を使うにはルールがあり、介護保険を使った住宅改修には高度な専門知識と技術も必要になってきますので、独断で工事をしないようにしてください。
必ず、専門知識を持っているケアマネージャー、住んでいる市区町村にある地域包括支援センターで相談しながら、本当に必要な住宅改修なのか、自分の身体にあった改修内容なのか、適正な価格なのかを見定めていくようにしましょう。
今回は「住宅改修で手すりを取付ける費用」について紹介してきましたが、
「福祉用具の手すりの種類、メリットデメリット」についても以下の記事にまとめてあるので参考にどうぞ。
⇒福祉用具と住宅改修 手すりはどっちがいい?福祉用具の手すりの種類、メリットデメリットを解説!
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